まだ大学生だった頃。お盆の時期に帰省した。
着いた翌日の早朝にお墓参りに行くよ、と母に言われていた。
実家までは長旅なのでその朝は疲れていて起きられなかった。
お墓は敷地内の少し離れたところにあるのでいつでも行けるし、
布団の中から「後で一人で行く」と母に伝えた。
1時間くらいで起きたけれど、お墓参りに乗り気がしない。
先に犬の散歩に行きたい。
私は実家の当時飼っていたウェルシュコーギーとの散歩が大好きだった。
コーギーとの散歩は必ず家を出て、左手の坂を駆け上がって行くのが通例だった。
いつもならコーギーはワクワクした顔で、坂まで一緒に猛ダッシュする。
リードをつけて歩こうとしたらコーギーが怪訝な顔をしている。
悲しいともとれる顔でじっと見ている。
そうしてるうちに起床時から少しあった頭痛が、だんだんひどくなってきた。
寝過ぎたかなと思っていると、コーギーが強い力でリードを引っ張り出した。
家を出て右手へ。
コーギーにとっては行ったことのないコースを進む。
そのまま私を引っ張り続ける。
目的地に着いたようで、そこでちょんとお座りした。
そこは、我が家のお墓の前だった。
そういうことか…と思って手を合わせる。
お墓参りを後回しにしてごめんなさい、と伝えた。
そうして目を開けたら、
お墓に着く直前まで激しい痛みだった頭痛がスッキリ消えていた。
犬は満足そうな顔で、いつものコースへ進んで行った。